十一月詠
方墳の風
金井 重

出土せる かわらけの破片 にぎりしとき
   祖たちの姿 ありありと見ゆ

飛鳥世の ほのかに甘き 酥を食めば
   方墳の風 ふく気配する
   於房総風土記の丘

大塔の 礎石の穴の 水静か 
   日照りも雨にも 水かさ変らず
   於廃寺となりし龍源寺

かみ逆立て まなこ吊上げ 円空の
   雲文激し 蔵王権現

歯をのぞかせ こぼれるような 「笑い薬師」
   円空さんの 声も聞こえく

ゆったりと 立ちし姿の 釈迦如来
   腹に渦巻く 雲文二つ

冬晴に 浮かれ芝川 わたりけり
   見沼たんぼの 用水縁ゆく

空見上げ 業平橋を 渡りけり
    スカイツリーの 顔は空のなか

くっきりと ビル従いて スカイツリー
    吾妻橋から 名所でござる

女偏に 家なら嫁ね 子なら好き
    生まれるはなに姓名の姓よ