十月詠
霧の海
金井 重

ダム青し 激しき風に 逃げまどう
    村落のみし 水面は満々

あかあかと 荒海染めし 入日追う
    早足の雲 ついに被いり

城下町 袋小路の 昼下り
    馬蹄の音に 追われ惑いし

山の上 空いちめんに 霧の海
    泳ぎうかびて 霧に憩いり

しめ縄の ゆれてる下の 小さき祠
    荒神様に プリンがひとつ

それぞれの 鳥のにぎわい 森の朝
    五重塔の 端然と建つ

つり鐘へ 撞木を放つ とき放つ
    重き響きに ゆられひたりし

原発に 水害地震の この地球
    さあ正念場 七十億人

「夜と霧」 リクェスト多し 図書館に
    見えざる市民の 顔見し心地す

アルプス越え ナイアガラ潜り もうすぐだ
    月の世界が 近づいてきた