五月詠
良寛の道(二)
金井 重
質素なる 古き本道 密やかに
  国上寺あり 山並のなか
境内の 山の気すかし ひともとの
  しだれ櫻は いまさかりなり
鞠ふたつ 掛軸ひとつの 草庵に
  くるくると 舞い落葉訪ねくる
良寛の 遊びし姿 見えかくれ
  はちすば通りの 宇奈具志神社
良寛の 墓碑めぐりきて 木村家に
  世情を うつす由之の文あり
   木村家の離れが良寛最後の住い
   由之=良寛の弟
木村家の 当主六十代 良寛の
  現代につながる 書をひろげ読む
与板町の 父の以南の 生家あと
  みどりの庭に 大き句碑あり
橋わたり 歌碑公園の 数々の
  かな文字やさし 豊かに流る
  避難所から
移りきて 田んぼの中の 避難所よ
  わが田をおもい あゝ切なしと
梅雨がきて 廃校あとの 避難所に
  来賓も消え ときの流れよ
二ヶ月余 間仕切風呂なし 避難所に
  昨日はありや ふるさと遠し