六月詠
  うみやまのくらし
金井 重
  《筑波山》
登りきて 女体神社の 山の気に
 願ごと忘れ 合掌したり
悠久の 女体男体 神の峰
  通う岩の道 ガマ石もあり
太古の森 とびこえて 一気に登る
  ケーブルカーあり 筑波山神社
境内の 袴に太刀の 口上士
  「ガマの油」に うたう鶯
  《火焔街道》
街道筋の 火焔土器に じっと座り
  半眼のてい 無人の部屋に
火焔土器も 王冠土器も 本名は
  なんとそっけない 深鉢土器と
山と川 火焔街道の 火焔土器
  火のごとく生れ 炎のごとく燃ゆ
日本史の 古代ミステリー 火焔土器
  この川ぞいに 生まれて消えぬ
火をおこす 遠つ祖かこみ ぬくまりし
  われらの遺伝子 たき火が好きだ
  《国東半島》
鹿肉たべ 魚の手づかみ うみやまの
  くらしもおかし 国東の旅
つゆ空の 山道すいすい 海をみて
  寺も八幡も これぞ国東
アフリカの 地図が拡がり ボールとび
  地球は丸いぞ 汗がはじける
つゆ空に 豊後聖人 たずねけり
  天地を師とす 人の像やさし
海山の 人ら元気だ たのもしか
  ともに行きましょ 人生の旅
高度下げ ガタガタふるわす 双発機
  機内はシンと 旅の終章