5月詠
     金井 重
  その名もしげさん
毎朝の「ののちゃん」家の おかしさよ
 ばばも生き生き その名もしげさん
   ――ののちゃん…朝刊に連載マンガの主人公
稲荷山 古墳の上に のぼり立てば
 五世紀の風 どっとおそい来
登りたる 古墳の上に もののふの
 礫槨のあり 五世紀末の
   ――礫槨…古墳の石室の中に棺を納めた石の囲い
陽がのぼり 東の空に 鳥かしまし
 白き残月 南西に高し
陽がさして 青き風あり 連休の
 無人の街路 手を振ってゆく
よき土偶 弓矢で狩猟の 縄文期
 いまも世にある 鷹匠たのもし
戦時下の チベット潜行 語る翁
 痩身のばし 亡き人多しと
   ――誠実な人柄の野元さんに再会して
せかせかと 歩けど遅しと 笑わせる
 蟹の如しか われら朋友
バス停で 無心に指折る 三十一文字
 女の遊行期 旅うた日記