四月詠 金井 重
 書を持ちて さくらの下で 開きけり
  「爆走中国」 われらが隣人
     --『爆走中国』森田靖郎著
 北宿坂 いつもの道の 華やぎて
  櫻の下を 花あびてゆく
 見沼べり 川面のさくら それぞれに
  流れにまかせ 急ぐでもなし
 花いかだ 三三五五と 流れつつ
  並木の櫻に 「お先に」と合図
 駅までに 小・中・高と 三校あり
  心若やぐ 校庭の花見
 さくらばな 浮かれうかうか はや晦日
  おあとに五月 控えてござる
 修善寺に きて雨やまず 寺ひとつ
  おがみて湯治の 客となりけり
 雲動き 岩山にょきり 顔を出す
  あごひげのごと みどりの濃淡
 糞土師の 野糞の講演 熱ありき
  紙は厳禁 拭き草多種
 いとしけり トイレの惜別 外っ国なら
  大地に肥料に 動物の餌を
 さわやかに 昨日に続く 快便よ
  今朝の曇天 何ほどのこと