十二月詠
 上野三碑
金井 重

宮司さんの 育てし青菜 頂きぬ
  酉の市開く 神社詣でに

ふと参りし 武蔵最古の 大社なり
  催馬楽神楽の 清しめの舞

頂きし 青葉大根に 故郷の味噌
  なじみて旨し 熱き味噌汁

銀杏もみじ かぶりて若やぐ かやぶきの
  神楽堂なる 騎西の明神

かさこそと 銀杏黄葉に 坐すわれに
  笛の音しみる 江戸里かぐら

笠石を 冠った多胡碑 六行の
  文字もくっきり 読める字もあり

多胡金井塚 山上の上野三碑
  文字文化伝う 東国の誇り

今にして ケイタイ持ちて あヽ忙し
  電子書籍の 始まりし年に

明と暗 じりじり綱引き 午前三時
  寒さもピーク 朝の始まり

乳母車と 一緒に乗りし エレベーター
  一期一会に のぞきてバイバイ