読むべし!
   「チベット語になった『坊ちゃん』」
金井 重
 06年はハーイ犬年です。313回地平線会議は、滝野沢さんが映像を駆使して「犬を見れば世界が見える」 そしておなじみ長野画伯のユニークな原画、各頁に犬がいる06年カレンダーが展示されて、会場に彩を添え、さらに、「犬眼レンズで旅する世界」(滝野沢優子12月3日出版)、「チベット語になった『坊ちゃん』」(中村吉広12月15日出版)の新刊書がひらづみされ、行動者の美術・文学・映像と地平線ならではの時空が出現しました。06年は漱石の「坊ちゃん」が誕生して100年です。地平線の坊ちゃん中村氏はチベットに赴任。明治の坊ちゃんに負けず劣らずの熱血漢、北京語と中央集権の官僚性の大波小波の中で、純情一路、チベット文化を愛し、学生たちに慕われ、チベット語と日本語の類似性に着目。ついに学生たちで「坊ちゃん」がチベット語に翻訳されるまでの物語。「チベット語になった『坊ちゃん』」の主人公です。その波乱万丈の物語は読者のハートを、しっかり握りしめる名著です。
◆チベットと言えば、学究的江本氏、行動者安東浩正さん、そして地平線にもいるミーハー。ダラムサラではダライ・ラマと握手し、チベットではアニ・ゴンパにステイするシゲ。各界各層にシンパが少なくありません。しかし花も実もある日本語教師。チベットの坊ちゃんは更にたいしたもの。なんと言っても彼の仏教知識と、アジア情勢の理解の深さが下地にあり、果敢な行動力がさわやかです。
◆明治の坊ちゃんの時代も、文明開化のゼニの世。坊ちゃんは、05年の流行語が「小泉劇場」「想定内」になんと言うでしょうね。そしてきっと平成の坊ちゃんに「君もやるねー」と声をかけるのではないでしょうか。06年の読初めは「チベット語になった『坊ちゃん』」をおすすめします。
坊ちゃんも百歳ぞなもし冬晴るる シゲ