論考「地平線・これまでとこれから」
人はなぜ旅に出るのか ルーツ編

金井重 

◆地平線300回大会で、ひとり旅シゲさんの喜寿を祝って花束と、会場の皆さんから大拍手を頂きました。なんたるラッキー。今年はハワイと中国・韓国でしたから、国は去年と同じ120ケ国、でも日数がふえて9月帰国してちょうど120ヶ月、それに喜寿。この三点セットが去年でも来年でもなく、絶妙のタイミングで300回大会とドッキング。これぞ兎年生まれ乙女座シゲさんに、旅神さまの粋な計らいでありました。

◆ラッキーガールも巷を歩けば「シゲさんまだやってんの」と霰がふってきます。リュック背負ってまだ目的のないふらふら旅を続けているのか、と言うのです。「そりゃあ、あんた、人生は旅ですからねぇ」と格好つけます。でもほんと、人はなぜ旅に出るのでしょう。よくよく考えると「我々はどこからきたのか、我々はだれか、我々はどこへ行くのか」という大命題にぶつかります。

◆この大命題は世界中の人が考えています。ワタリガラスが私達の祖先だと信じている人を始め、先住民の人達もみんな考え、それぞれの神話を持っています。でも人は神様がお作りになった、私達は選民なのだと言って自然や動物を自分勝手に食い荒らす、選挙に強い傍若無人の人達もいます。

◆ほんとに不思議なことに500万年前、地球では爬虫類が滅亡し、哺乳類の時代に入ったそうです。なかでもサルは、爬虫類が手をつけてなかった森林の樹上で、道具も使うサル社会を発達させたそうな。なにしろ天敵は少ない、食料は豊富ですからね。しかし、この楽国にも個体数の増加という大問題が生まれるわけです。そうなるとボスや保守的なサルは動かないでしょうが、好奇心の強い動けるサルが森からおん出るわけよ。未知の世界へ。

◆森の続きの、森と全く違うサバンナに出てきたサルに、ここで進化がおきます。直立二足歩行の猿人になったのです。学説はいろいろありですが、三輪塾長は「遠くを見ようと背のびをしたのである」と背のび派です。「地平線を見たのでしょうか」地平線学提唱の塾長は「そうじゃ」とおっしゃっています。この猿人が150~60万年前に原人に進化し、20万年前は新人に替り、地球に広がったというわけです。

◆ヨーロッパに向かった人達がコーカサイド、アフリカに残った人達がネグロイド、片やアジアからアラスカに渡り、南米の最南端まで5万キロの旅を続けた人達がモンゴロイド。中・南米の旅では子供時代の、近所のおじさんやおばさんそっくりさんの間を歩いてきました。子供のお尻には鮮やかな蒙古斑。私達とはいとこといった間柄でしょう。同じモンゴロイドです。

◆不思議なことに、いま日本の赤ちゃんの蒙古斑はとても薄いんですよ。それからサルでなくとも、サルと同じ、いやそれ以上と思える動物、例えば狼、あの賢さとしなやかな肢体と行動力。どうして狼人になり原人になり新人にならなかったのでしょうか。爬虫類と同じ原野に生息し全く違う環境でなかったせい?環境の変化が大きな要素でしょうか。

◆サルがサバンナに出てくるのにも二説あるそうです。追い出されたのか、自ら出てきたのか。両方でしょうね。戦前の日本人は生活のために北・南米に出て行った経済移民。戦後も大国年代以降は、窮屈な日本を飛び出した社会難民よ、という人達に出会ってきましたが、やっぱり両方の要素が混ってます。

◆さて、やっと未知の世界へ旅立ち最初の人が生まれたところですが、今日はここでおしまいです。25年前好奇心に満ちた面々が、遥かなる大昔から続いてきたこの生命を受け継いで、たくましく歩み続け世界の注目を集める、地平線会議については、タイトル“カレーズの水の流れは滔々と”だけを紹介し、なかみは次までおあずけとさせて頂きます。

◆本日は“人はなぜ旅に出るのか ルーツ編”にお付き合い頂きありがとうございました。

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                 三文亭しげ女